3月のカルテ4

「外出どうだった?」

 

「うん…たのしかったです」

 

私はゆっくり笑ってみせた。

 

 

『また死のうとしたんだろ』

『正直に言えよ』

『ま、お前のことなんてどうでもいいんだけど』

 

 

ま、増田さん…?

 

何でそんなこと言うんや…?(困惑)

 

まるで優しかった彼氏が急に暴力的になったようになっていった。このッDV男ッ!!

 

やめて!お腹の子だけは!!(いない)

 

今考えたら幻聴でしかないが

当時の私には「もぅマヂ無理。リスカしょ。。」

状態だったのである…。

 

病院では1番増田さんに心開いていたから

ショックがでかかった。

 

『ほら、死にたいんだろ?』

『はやく死ねよwww』

『死んだら増田さんが喜んでくれるぞ?』

 

違うッ…!!

 

そんなわけない!!!!!

 

増田さんは…私に…生きると会えるって教えてくれた…だから…だから…!!

 

 

『いいから、早くしないと警察くるぞ〜?』

 

 

「うっせぇんだよ!!」

 

 

大声をあげてしまった瞬間

デイルームはシーンと静かになった。

 

 

一瞬で我に返ったよね(((

 

 

死にたみが深かった…

 

すぐさま看護師さんや

その場にいたお医者さんに囲まれた。

 

「部屋行こう」

 

 

そうやって私は重い腰を持ち上げて

病室へと向かった…。

 

 

「ヒビさん、保護室行こう」

 

 

「っ…はぁ…?」

 

 

保護室とは、まぁ、自分をコントロールできない人とかが入る場所で暴れたり叫んだりすると人が入る対象となる…。

 

「ま…、待ってください!

実は幻聴なんて大嘘で実は全部演技で…?」

 

 

なんで今更そんなすぐバレるような嘘を…

 

「うーん。あれ全部演技だったの…?」

 

お?これは信じてる(んなわけない)

 

「はい!」

 

増田さん…

そんな苦しい嘘だなぁって顔しないで…

 

「だっ…だって…ほ、保護室は…い、嫌だぁ!」

 

そう言って私は涙をボロボロこぼした。

 

なんでこんな辛い思いをしてるのに

こんな辛い思いを病院側からさせてくるんだ。

 

こんなのってないだろ…。

 

増田さんに背中をさすられながら

私は扉の向こうの保護室へと向かった。

 

 

 

「あぁぁぁあぁぁぁあ、しんどい」

 

「しんどいよなぁ…」

 

「だってJKにこれはきついだろ!」

 

ひとつの部屋には

トイレ、ベット、防犯カメラしかなく

防犯カメラから目の前にトイレがあり

 

ドアはドアノブがなく外からしか開けられなくなっているのである。

 

もちろん外なんて見させねぇ。

くもりガラスだぜ?って感じ。(腹立つ)

 

「牢屋かよここはァ!!」

 

そしてまた増田さんの前で泣いた。

 

主治医め…このタイミングでどっか行くとか、

どうゆうことだよォォ!!(忙しいんやな)

 

 

「なぁ…俺からもちょっと言ってみるよ…

流石に保護室は酷すぎるよ…

研修医の俺じゃ何も動けないかもしれないけど…」

 

「この世の中を! ウグッブーン!! ゴノ、ゴノ世のブッヒィフエエエーーーーンン!! ヒィェーーッフウンン!! ウゥ……ウゥ……。ア゛ーーーーーア゛ッア゛ーー!!!! ゴノ! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中を! ゥ変エダイ! その一心でええ!! ィヒーフーッハゥ。一生懸命訴えて、西宮市に、縁もゆかりもない西宮ッヘエ市民の皆さまに、選出されて! やっと! 議員に!! なったんですううー!!!」

 

 

いやいや野々村やってる場合じゃないから

 

わたしこれから閉じ込められるんだぞ

 

監禁ぞ??我監禁ぞ??

 

この時はまだ監禁の恐ろしさを舐めてた。

 

「はい、食事でーす。」

 

看護師さんが持ってきてくれた

ちっちゃいトンカツにはソースがかかっていた。

 

普段ならソースは自分でかけられるのに。

 

そこで自分が隔離されているという実感がしみじみされていった。

 

「ほら、早く食べちゃいな?

俺横にいるから…」

 

増田さんはベットの上で食べてる私の横で

横にいてくれた。

 

「外出つらかったんだよね。」

 

「え…」

 

「君が今回の外出で死にたいって思ってたかもしれないからこの話するけど。」

 

増田さん、わかってたんだ…。

 

 

「俺…大切な人が死ぬってこんなに辛いことなのかって、思ってさ…」

 

「俺、この研修が終わったら病理診断科になるから、君が、君たち児童精神科の子どもたちが最後の患者になるんだよ…」

 

「俺は…君が症状を収まることを切に願ってる…でも、でも、それでも死にたいって思うなら。わがままだけど、俺が悲しいんだ…」

 

 

「増田さん…」

 

 

「実は私、今回の外出で死のうと思ってました…親の目を盗んで…」

 

「でも、増田さんは1人の命を救いました…」

 

「あの手紙で、私という命を、私という存在を増田さんは救ったんです。」

 

「朝、増田さんと約束しました…。

有名になったらサインを渡すって…。

有名になるまで…生きる希望だぁ…って…

そう思いました…。」

 

 

増田さんは照れたような顔で

 

「早く食えッッッ!!」

 

って言いました。

 

 

続きます。